営業やサービス紹介の動画が「見られるけど選ばれない」とお悩みですか?ドコモが30%のブランドリフトを実現した動画制作の考え方と、中小企業でも実装できる5つのステップをご紹介。成果につながる動画制作のポイントを解説します。
はじめに:動画は作ったのに、なぜ顧客が増えないのか
目次
「営業動画を作った」「サービス紹介動画を制作した」「採用動画も配信している」——でも、視聴数は増えるのに、問い合わせや申し込みが増えない。そんな悩みを抱えている企業担当者は、実は少なくありません。
多くの企業が陥る罠は、シンプルです。「動画を見てもらう」ことに注力して、「動画を見た後に行動してもらう」ことを忘れているのです。
実は、この課題を解決したのが、NTTドコモです。2024年、同社はTikTokの短編ドラマを活用することで、Z世代向けキャンペーンの認知率を約21%から49%へ引き上げました。30ポイント以上のブランドリフトを実現したこの事例から、中小企業でも実装できる動画制作の戦略が見えてきます。
本記事では、ドコモの成功事例をベースに、「見られるけど選ばれない」という課題から脱却するための、動画制作の考え方と実装方法をお伝えします。
なぜ動画は再生されるのに、成果に繋がらないのか
「認知」と「共感」の根本的な違い
動画マーケティングで最初に理解すべきことは、「認知」と「共感」は全く別物だということです。
従来のマーケティング思考では「認知を広げることが先決」と考えられてきました。商品の存在を知ってもらい、理解してもらい、その後に購買に至る——というファネル型の思考方式です。
しかし、ドコモが実現した30%のブランドリフトは、別のアプローチから生まれました。同社は「認知」ではなく「共感」を軸に、動画制作戦略を設計したのです。
具体的には、通信サービスの説明は一切せず、Z世代の「青春」をテーマにした短編ドラマを制作。視聴者は「サービス紹介を見ている」という認識ではなく、「面白い物語を楽しんでいる」という体験をしました。その過程で、潜在的にブランドが視聴者の心に入り込んだわけです。
多くの企業が見落としている「行動指標」
もう一つの大きな違いは、測定方法にあります。
多くの企業は、動画の成功指標として「再生数」「視聴完了率」といった数字を見ています。確かにこれらも重要ですが、ドコモが重視したのは「Z世代向けキャンペーン認知率」という、実際のビジネス行動に結びついた指標でした。
営業動画なら「視聴後の商談化率」、採用動画なら「応募者の質と応募数」といった、実ビジネスに直結する数字を追跡することで、初めて動画の真の価値が見えてくるのです。
ドコモの成功事例 何が違ったのか
実績数値で見るドコモの動画戦略
ドコモが実施した施策の具体的な成果は、以下の通りです。
- Z世代向けキャンペーン認知率:21% → 49%(30ポイント以上の上昇)
- フォロワー数増加:18,000人 → 約24.8万人(約13.8倍)
- 平均視聴数:約250万回/動画
- 実施期間:約6ヶ月
これだけの成果を上げることができた背景には、ドコモが「ショートドラマ制作のパイオニア」であるクリエイティブ集団「ごっこ倶楽部」と協働し、緻密な戦略設計を行ったという点があります。
ドコモが実装した3つの戦略的工夫
戦略1:商品説明を完全に排除
通常、営業動画やサービス紹介動画は「この商品のここがすごい」「このサービスはこんなメリットがあります」という説明で構成されます。
しかしドコモが制作した短編ドラマは、通信サービスについて一切説明していません。代わりに、高校生活の日常という「若者にとってリアルな世界」を描写することに注力しました。
戦略2:企業メッセージの潜在的な埋め込み
商品説明をしない代わりに、ドコモは企業色である「赤」を登場人物のユニフォームに配置したり、ドコモのロゴをさりげなく画面に入れたりしました。
視聴者は、明らかな宣伝だとは気づかないレベルで、ブランドを認識する仕組みです。これは「広告感の完全排除」という戦略に基づいています。
戦略3:視聴者が「続きを見たい」と思える物語設計
すべてのショートドラマには、視聴者が「次はどうなるんだろう」と思わせるクリフハンガー(つづきが気になる展開)が組み込まれていました。
これにより、1本の視聴が終わった後も、次の動画を見たくなる心理状態が生まれたのです。
中小企業でも実装できる、動画制作の5つのステップ
ドコモのような大企業でなくても、以下の5つのステップを踏むことで、成果に繋がる動画制作が可能です。
ステップ1:動画の「目的」と「視聴者」を言語化する
最初に、最も重要な意思決定を行います。
- 動画の目的は何か:新規顧客獲得、既存顧客の利用促進、採用強化、ブランド認知か
- 誰に見せる動画か:経営層、営業部門、求職者、Z世代か
- 視聴後、視聴者にどう行動してほしいか:問い合わせ、商談申し込み、応募申請か
この「何を削ぎ、何を残すか」という判断が、動画制作のすべての基礎になります。
実例: 営業動画の場合、見せるべき相手は「購買決定権を持つ経営層」か「実務を担当する部門長」かで、メッセージの深さや説明量が全く変わります。
ステップ2:「スペック説明」ではなく「世界観」を設計する
次のステップは、動画の構成案(シナリオ)を作成する段階です。
ここで陥りやすい落とし穴が「機能説明の羅列」です。「この製品はこういった機能があって、こういったメリットがあります」という構成では、視聴者の心は動きません。
代わりに、以下を意識してください。
- 「その商品を使った後、どんな未来が広がるか」を見せる
- 視聴者の感情的な課題に応える
- 具体的なシーンや場面を通じて、ベネフィットを描写する
実例: サービス紹介動画の場合、「業務効率が50%向上します」と説明するのではなく、「導入前の忙しそうなスタッフの様子」と「導入後、余裕を持って顧客対応をしているスタッフの様子」を対比させる手法が効果的です。
ステップ3:配信プラットフォームとターゲット層を絞り込む
動画の制作が終わった後、「どこで、誰に見せるか」を決定します。
ドコモがZ世代向けのキャンペーンでTikTokを選んだように、ターゲット層が実際にアクティブなプラットフォームを選ぶことが重要です。
| ターゲット層 | 主要プラットフォーム | 推奨動画長 | 配信の工夫 |
|---|---|---|---|
| Z世代(16-24歳) | TikTok、Instagram Reels | 15秒~60秒 | 縦型、音声オフでも理解できる |
| ミレニアル世代(25-40歳) | YouTube、LinkedIn | 2~5分 | 横型、テロップで要点を表示 |
| 経営層(40代以上) | LinkedIn、YouTube | 3~8分 | 数値と事例を含む、説得力重視 |
ステップ4:フルファネル活用で1本の動画を複数の目的に使う
ドコモが成功した重要なポイントが、「1本の動画を複数の段階で活用した」という点です。
短編ドラマで生成した素材は、以下の複数の場面で再利用されました。
- 認知段階:オーガニック配信(広告費なし)でバイラル効果を狙う
- 興味段階:広告クリエイティブとしてターゲット配信
- 比較検討段階:HPやメールマーケティングに埋め込む
- 申し込み段階:CRM(顧客管理システム)への導線に活用
このフルファネル活用により、制作費の効率化と、複数の顧客接点での接触が可能になるのです。
ステップ5:行動指標で成果を測定し、改善する
最後に、視聴数だけでなく「実ビジネスに繋がったか」を測定します。
| 動画の種類 | 測定すべき指標 | 目標値の設定方法 |
|---|---|---|
| 営業動画 | 視聴後の商談化率、案件化までの期間 | 過去の営業成績と比較 |
| サービス紹介動画 | クリック率(CTA)、資料ダウンロード数 | 業界ベンチマークを参考 |
| 採用動画 | 応募数、応募者の質(離職率低下) | 採用目標数と連動 |
| ブランド動画 | ブランド認知率、好感度スコア | 前後の調査データで比較 |
ドコモが「Z世代向けキャンペーン認知率」で成果を判定したように、自社の最終的なビジネス目標に繋がる指標を設定することが、動画の真の価値を引き出す鍵になります。
企業担当者が知っておくべき、動画制作の実務情報
動画制作の費用相場
「動画を作りたいけど、予算感がわからない」という質問をよく受けます。動画制作の費用は、以下の要素で大きく変わります。
| 動画の種類 | 制作規模 | 費用相場 | 想定内容 |
|---|---|---|---|
| 営業用アニメーション | 短編(30秒~1分) | 30万~80万円 | イラスト、アニメーション、音声 |
| 実写サービス紹介 | 短編(1~3分) | 50万~150万円 | ロケ撮影、出演者、編集 |
| 採用動画 | 短編(2~5分) | 40万~120万円 | 社員インタビュー、撮影、編集 |
| 複数本制作パッケージ | 3本以上 | 100万~250万円 | スケール効果による割引 |
重要なポイント: 費用が安い動画制作会社を選ぶのではなく、「ステップ1~5まで、戦略設計を伴に行ってくれるか」を確認することが重要です。
制作期間の目安
動画の種類と規模によって、制作期間は異なります。
- ヒアリング~企画立案:1~2週間
- シナリオ作成~修正:1~2週間
- 撮影・収録:1~2週間(実写は日程調整が必要)
- 編集・修正:2~3週間
- 最終確認・納品:1週間
全体の目安:6~10週間(約1.5~2.5ヶ月)
ただし、「短期納期での対応」を謳う制作会社の場合、戦略設計や修正対応が省略される傾向があります。長期的に成果を出すなら、ある程度の制作期間を見積もることをお勧めします。
動画制作を依頼する際の注意点
実際に動画制作会社に依頼する際、多くの企業が陥る落とし穴があります。
注意点1:「制作実績」だけで判断しない
制作会社のポートフォリオは、たしかに参考になります。しかし「綺麗な動画が作れる」ことと「成果に繋がる動画が作れる」ことは別です。
依頼前に「過去のクライアントで、制作後にどのような成果が出たのか」を確認してください。
注意点2:「戦略設計」を含めるか、確認する
多くの制作会社は「シナリオが決まったら、あとは制作します」というスタンスです。しかし本当に効果が出る動画は、「目的の言語化」「視聴者の定義」「測定方法の設計」といった戦略段階が重要です。
依頼時に「戦略設計は含まれるか」「修正対応は何回まで含まれるか」を明確にしてください。
注意点3:納品後の「配信設計」と「効果測定」まで伴走するか
動画が完成した後も、どう配信するか、どう測定するかが、成果を左右します。制作会社選びの際は「納品後のサポート」について確認することが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1:「YouTube」に投稿すれば、それで十分では?
A: YouTubeは優れたプラットフォームですが、視聴者層が固定されています。
ドコモのようにZ世代をターゲットにする場合、YouTubeよりもTikTokやInstagram Reelsの方が、アクティブユーザーの属性に適合します。重要なのは「ターゲット層が実際にいるプラットフォーム」を選ぶことです。
複数プラットフォームでの配信(YouTube、TikTok、Instagram同時配信)も、手法としては有効です。
Q2:「アニメーション動画」と「実写動画」、どちらが効果的?
A: どちらが優れているわけではなく、目的によって使い分けます。
アニメーション動画が適している場合
- ビジネスモデルや複雑なプロセスを説明したい時
- スタッフの手配が難しい場合
- 世界観やイメージを重視したい場合
実写動画が適している場合
- 信頼性や親近感を重視したい場合(採用動画など)
- 実際の使用場面を見せたい場合
- 経営層への提案資料として活用したい場合
多くの成功事例は「アニメーション + 実写の組み合わせ」です。
Q3:制作後、すぐに効果が出ますか?
A: 動画の効果は、配信開始からすぐに数字に表れるわけではありません。
ドコモの事例でも、30%のブランドリフト達成までに「約6ヶ月」を要しています。
効果測定の目安
- 1ヶ月目:視聴数、視聴完了率の把握
- 2~3ヶ月目:クリック率、資料ダウンロード数などの中期指標
- 3~6ヶ月目:商談化率、応募数などの実ビジネス指標
短期での判断を避け、最低でも3ヶ月は継続して配信・測定することをお勧めします。
Q4:「複数本の動画」を制作する場合、費用は安くなりますか?
A: はい。複数本制作(3本以上)の場合、通常は「パッケージ割引」が適用されます。
例えば、営業動画3本を個別に制作する場合と、パッケージで制作する場合で、20~30%のコスト削減が期待できます。
また、ドコモの「フルファネル活用」戦略にならい、1つのメッセージから複数の動画を派生させる手法(縦横フォーマット、長短バージョンなど)も、効率化のポイントです。
Q5:「依頼してから、最後の納品まで」、何を確認すればいい?
A: 以下のチェックポイントを参考にしてください
- 初期段階:目的、ターゲット、視聴後の行動が言語化されているか
- シナリオ段階:「スペック説明」ではなく「世界観」が描かれているか
- 撮影・制作段階:進捗報告の頻度、修正対応の含まれる回数
- 納品前:複数環境での再生確認、字幕の正確性、音声の品質
- 納品後:配信設計のアドバイス、1ヶ月後の効果測定サポート
特に「ステップ1の戦略設計」が丁寧に行われているかが、成果を大きく左右します。
まとめ:成果に繋がる動画制作の本質
ドコモが30%のブランドリフトを実現できた理由は、単に「綺麗な動画を作った」からではありません。
- 「認知」ではなく「共感」を設計した
- 商品説明ではなく「世界観」を描いた
- 視聴数ではなく「行動指標」で成果を測定した
- 1本の動画を「フルファネル」で活用した
これら4つの視点を組み込むことで、中小企業でも大企業と同じレベルの成果を目指すことは十分可能です。
「営業動画を作りたい」「サービス紹介動画が必要」「採用動画で人材を確保したい」——そうした漠然とした課題がある場合、最初に行うべきは「戦略設計」です。
自社の商品やサービスについて「何を削ぎ、何を残すか」を言語化し、ターゲット層の心に響く動画制作を実現してください。
最後に
本記事でお伝えした5つのステップや、ドコモの事例から抽出した戦略は、すべて実装可能なアプローチです。
ただし、実際に動画制作を進める際には、自社の課題に応じた、カスタマイズされた戦略設計が不可欠です。
「自社の動画はどう制作すべきか」「予算内で、どこまで実装できるか」「配信方法はどう決めるか」——そうした疑問があれば、お気軽にご相談ください。
営業動画、サービス紹介動画、採用動画など、あらゆる用途の動画制作実績を基に、みなさんのビジネス課題に最適なアプローチをご提案させていただきます。

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