ECサイトに動画を導入したのに売上が変わらない理由と対策

はじめに 「動画は作ればいい」という勘違い

「ECサイトにも動画を入れたほうがいいって聞いたから、YouTubeに商品紹介動画をアップしました。でも、売上はほぼ変わりません……」

こうした相談を、マーケティング担当者からよく聞きます。実は、この状況は珍しくありません。多くのEC企業が「動画の制作」に注力する一方で、最も重要な「動画をどこに配置するか」という戦略を見落としているのです。

本記事では、売上84.9億円(2025年7月期)を実現した「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの事例から、EC動画マーケティングで成果を出すための配置戦略と、具体的な実装ステップをお伝えします。記事を読むことで、あなたの企業の動画投資がなぜ活きていないのか、その理由が明確になるはずです。


EC動画マーケティングが失敗する3つの理由

理由①:「YouTube=認知」という単純思考

多くのEC企業は、YouTube動画を「広告」として位置付けています。つまり「たくさんの人に見てもらって、認知を広げる」というアプローチです。

しかし、クラシコムのYouTubeチャンネル(登録者100万人)を見ると、全く異なる戦略が取られています。それは「新規顧客の入口として機能させる」というもの。

YouTube上で新しいユーザーが動画を見る

→ 説明欄のリンクから自社ECサイトへ誘導

→ アプリをダウンロード

→ アプリ内で継続的にコンテンツを閲覧・購買

このように、YouTubeはあくまで「顧客流入の一ステージ」に過ぎません。ここを理解していない企業は、YouTube動画を作っても集客につながらないのです。

理由②:「アプリ内にコンテンツと購買が混在していない」

クラシコムのアプリを開くと、目に入るのは「読みもの」と「お買いもの」が並列配置された画面です。これが実は非常に重要です。

ユーザーがアプリで記事を読んでいて「この商品が欲しい」と思ったとき、すぐに購買できる導線がある。これを「偶発的な購買導線」と呼びます。

通常のECサイトでは、「商品を探す」と「コンテンツを読む」が分離されています。だから購買率が低いのです。結果として、アプリ経由の売上がクラシコムで80%に到達しているのに対し、多くの企業は30~40%程度で止まっています。

理由③:「各チャネルが独立して機能している」

あなたの企業のマーケティングチャネルを見てください。

  • YouTubeは「認知部隊」
  • メルマガは「既存客向け」
  • Instagram・LINE は「ファン向け」

こんなふうに、各チャネルが孤立していないでしょうか。

クラシコムは全く逆です。新しいYouTube動画をアップするとき、メルマガ・LINE・アプリプッシュから一斉にYouTubeへ誘導します。すると、初動の再生数が高まり、YouTubeのアルゴリズムが「人気動画」と判定。その結果、オーガニック検索での表示が増える——こうしたマルチチャネルの相乗効果が売上を加速させているのです。


クラシコムの動画戦略から学ぶ3つの実装ポイント

ポイント①:「資産動画」と「認知動画」の使い分け

EC動画制作で最初に理解すべきは、動画には大きく2つの種類があるということです。

【資産動画】

  • 商品の使い方、選び方、スタイリング例
  • 半年~1年単位で継続的に再生される
  • SEO効果あり(Google検索結果に動画が表示される)
  • 制作期間:2~4週間
  • 費用相場:1本あたり15万~50万円

【認知動画】

  • トレンド・季節ネタ・スタッフの日常
  • 短期的なバズを狙う
  • リーチ拡大が目的
  • 制作期間:1~2週間
  • 費用相場:1本あたり10万~30万円

クラシコムが月に100本のコンテンツを制作できているのは、この2つのバランスが取れているからです。新規獲得には「認知動画」で初動を作り、その後「資産動画」で継続的な売上につなげる——このメリハリが重要です。

ポイント②:「配置設計書」を制作前に作成する

最も重要なのが、実際に動画を制作する前に「配置設計書」を作ることです。これは以下の内容を明確にするドキュメントです。

  • どの動画を、どのチャネル(YouTube/Instagram/メルマガ/アプリ)に配置するか
  • 各動画の説明欄に、どのリンク(自社EC/LP/問い合わせフォーム)を入れるか
  • 各チャネル間の相互リンク構造
  • 期待される流入→購買までのカスタマージャーニー

多くの企業は「動画ができたら、どこに置こうかな」と考えます。これは逆です。「この顧客体験を実現するために、どんな動画が必要か」という順序で考えるべきなのです。

配置設計書がしっかりしていれば、動画制作会社との打ち合わせもスムーズになります。制作期間の短縮、修正回数の削減にもつながり、結果として費用効率も向上します。

ポイント③:「月1本の資産動画+週1本の軽い動画」から始める

「うちも100本作りたい」と思うかもしれませんが、無理は禁物です。

推奨される実装ステップは:

【Phase 1:月1本の資産動画開始】

  • 期間:1~2ヶ月
  • 費用:15万~50万円/月
  • 目的:ECサイトの各商品ページに配置、継続的な売上向上を測定

【Phase 2:軽い動画を週1本追加】

  • 期間:2~3ヶ月目から
  • 費用:5万~15万円/週
  • 目的:SNS・メルマガでの新規認知を拡大

【Phase 3:本格的な複数動画展開】

  • 期間:3ヶ月目以降
  • 費用:月50万~200万円(規模に応じて)
  • 目的:多チャネル・複数企画での定期配信

このように段階的に進めることで、効果測定ができますし、PDCAサイクルも回しやすくなります。


第3章:EC動画制作にかかる費用と制作期間

多くの企業が気になるのが「実際いくらかかるのか」という点です。相場をお示しします。

動画タイプ制作期間費用相場特徴
商品紹介動画30秒~1分2~3週間15万~30万円最もスタンダード。複数商品なら割引あり
使い方・ハウツー動画1~3分3~4週間30万~50万円テロップ・BGM・効果音に手間がかかる
ブランドストーリー動画2~5分4~6週間50万~100万円スタッフ出演・ロケーション取材が必要
モーニングルーティン系5~10分3~4週間40万~80万円YouTubeでリピート視聴狙い
SNS短尺動画15秒~30秒1~2週間5万~15万円複数本まとめ制作で効率化可能

注意点: これらは「制作のみ」の費用です。企画・構成・配置設計は別途必要な場合があります。信頼できる制作会社であれば、これらが含まれているかを事前に確認しましょう。


第4章:EC動画制作を依頼する際の3つの注意点

注意点①:「とりあえず作ってみる」は絶対NG

制作会社の営業は「まずは1本作ってみましょう」と言うかもしれません。しかし、これは危険です。

理由は、配置戦略なしに1本作った動画は、ほぼ成果につながらないからです。その結果「動画制作は効果がない」という誤った結論に至り、以降の動画投資に踏み切れなくなります。

制作を依頼する前に、必ず以下を確認してください。

  • 制作会社が「配置設計」を提案してくれるか
  • KPI設定(再生数ではなく、「購買数」「問い合わせ数」など)を一緒に設定するか
  • 制作後の効果測定とPDCA改善を含めるか

「とりあえず」ではなく「戦略ありき」で進むことが、動画マーケティングの成功の鍵です。

注意点②:「見た目の良さ」だけで制作会社を選ばない

ポートフォリオを見て「この制作会社の動画はきれいだな」と思っても、注意が必要です。映像のクオリティと、売上につながる動画かどうかは別問題だからです。

確認すべきは

  • クライアント企業の「売上」「問い合わせ数」の改善実績があるか
  • 単なる映像制作ではなく、マーケティング視点を持っているか
  • 効果測定のためのタグ設定(GA4など)を提案してくれるか

特に「オリジナルドラマを作った」「映画化された」といった事例は、確かに話題性がありますが、あなたの会社の売上向上に直結するとは限りません。

注意点③:修正回数と期間の扱いを事前に確認

動画制作でよくあるトラブルが「修正の無限ループ」です。

制作会社と契約する前に、必ず以下を確認してください。

  • 修正回数は何回まで含まれるか(通常は3回が目安)
  • 修正対象の範囲(映像内容か、テロップか)
  • 修正の対応期間(通常は2営業日以内)
  • 想定外の大幅修正が発生した場合の対応

曖昧なまま契約すると、予定外の費用や期間延長が発生します。


よくある質問:EC動画制作について

Q1:うちは商品が地味です。動画で売上が伸びますか?

A:商品の地味さは関係ありません。重要なのは「どう見せるか」という演出です。クラシコムの「北欧、暮らしの道具店」は、正直なところ、日用雑貨やアパレルで、一見「地味」です。しかし、「朝の習慣」「部屋作り」といった生活シーンとの結びつけ方で、視聴者を惹きつけています。お手持ちの商品カテゴリを教えていただければ、どのような表現が有効かご提案できます。

Q2:YouTubeとSNS、どっちから始めるべき?

A:推奨順は「YouTubeの資産動画」→「SNS短尺動画」です。理由は、YouTubeの動画は検索エンジンからも流入するため、半永久的に資産になるからです。SNS短尺は「フロー」(一度流れたら消える)なので、単体では効果が限定的です。ただし、YouTubeで公開した動画の要点を15秒に編集してSNSで配信すれば、相乗効果が生まれます。

Q3:今月から始めたいのですが、制作期間の短縮は可能?

A:短縮は可能ですが、品質とのトレードオフが発生します。通常2~3週間の制作を1週間に縮めることは技術的には可能ですが、修正の時間が限られるため、NG連発のリスクが高まります。推奨は「今月から企画・構成を開始し、来月から制作スタート」というプランです。この方が、結果的に納期も品質も良好です。

Q4:動画の効果をどう測定すればいい?

A:再生数ではなく「その後の行動」を測定すべきです。具体的には、GA4(Googleアナリティクス4)で「YouTube動画視聴者がサイトに流入した後、購買または問い合わせに至ったか」を追跡します。または、YouTube説明欄に特別なクーポンコードやURLを入れて、何人が経由したかを数えます。このように「動画視聴」→「購買」という因果関係を可視化することが、動画投資の成否を判断する鍵になります。

Q5:動画を作った後、どのくらいで効果が出ますか?

A:2~3ヶ月を目安に見てください。YouTube動画は公開初期は検索エンジンに拾われにくく、オーガニック流入は徐々に増えていきます。ただし、メルマガやSNSで配信すれば、初日から効果を測定できます。重要なのは「すぐに判断しない」ことです。最低3ヶ月のデータを集めてから、続行・改善・中止の判断を下すことをお勧めします。


まとめ:EC動画制作の成功は「戦略」で決まる

「うちも動画マーケティングをやりたい」という気持ちは、素晴らしいと思います。

ただし、覚えておいてください。動画の成功は「映像のクオリティ」ではなく「配置戦略」で90%決まります。

  • 商品紹介動画を作ったなら、それをどこに置くか
  • YouTubeで認知を拡大したなら、その後どこへ誘導するか
  • メルマガで配信するなら、その直後に何を促すか

この流れが明確になっていれば、制作会社との連携もスムーズですし、費用対効果も格段に高まります。

本記事でお伝えした「配置戦略」「段階的な実装」「効果測定」の3つをおさえた上で、制作を進めることをお勧めします。


「うちの場合、どんな動画が有効だろう?」「配置戦略を一緒に考えてほしい」——そうした疑問やご要望があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。

無料相談を受け付けています。企業担当者のみなさんが抱えている、実際の課題を伺った上で、最適な動画戦略をご提案させていただきます。

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