企業動画制作で失敗しない5つのポイント—星野リゾート事例から学ぶ

はじめに:「動画制作」は投資か?それとも浪費か?

「動画マーケティングが重要」—このフレーズはここ数年、どの企業でも耳にするようになりました。しかし、実際に動画を制作して投稿してみても「期待していた成果が出ない」「視聴数は増えたけど、営業につながらない」という悩みを持つ企業は少なくありません。

問題は、動画そのものの「品質」ではなく、「動画の役割設計」と「配置戦略」にある場合がほとんどです。本記事では、ホテル業界で約9倍の予約増加を実現した星野リゾートOMOの事例を分析しながら、動画制作で失敗しないための実務的なポイントを5つお伝えします。


動画制作で成果が出ない企業に共通する3つの勘違い

勘違い①:「視聴数が増える=成功」と思っている

最初の大きな誤解は、動画の視聴数と実際のビジネス成果が別問題だということを理解していないことです。

星野リゾートOMOのケースでは、動画視聴数が過去の類似キャンペーン比で約3倍に増加しました。しかし重要な数値はそこではなく、スペシャルプランの予約数が約9倍に増加したということです。

つまり、「3倍見られた」という視聴実績よりも、「9倍予約された」という営業実績の方が、企業にとっては圧倒的に価値があるということです。

多くの企業は Google Analytics や YouTube のダッシュボードを見て「視聴回数が○○回だから成功」と判定していますが、本来測定すべきは「商談化数」「予約数」「問い合わせ件数」といったビジネスインパクトなのです。

勘違い②:「きれいな動画を作ればいい」と思っている

次の誤解は、動画の「完成度」を重視して、「役割設計」を軽視しているケースです。

企業担当者からよく聞く話が「高いお金をかけて、プロのクリエイターに作ってもらったのに、SNS上では全然見られなかった」というものです。理由は単純で、見込み客は「なぜこの動画を今見る必要があるのか」という行動動機がないからです。

星野リゾートが成功した理由は、動画の「画質」や「編集のセンス」ではなく、**「クイズという動機付けで、ユーザーが自然に視聴する仕掛け」**を用意したからです。

勘違い③:「1つのプラットフォームに投稿したら十分」と思っている

3つ目は、複数プラットフォームでの配置戦略の欠落です。

Instagram、YouTube、TikTok、LinkedIn など、各プラットフォームのアルゴリズムは異なります。1つのプラットフォームだけに投稿しては、接触頻度が限定されてしまいます。

星野リゾートOMOは、Instagram の投稿・ストーリーズ・YouTube に同じブランドムービーを配置することで、複数の接触機会を作りました。これが最終的なコンバージョン(予約)を加速させた要因の一つです。


失敗しない動画制作の5つのポイント

それでは、企業が動画制作を検討する際に、失敗を避けるための5つのポイントを解説します。

ポイント1:「見込み客を動画に導く動機」を設計する

動画制作の最初のステップは、「なぜ見込み客はこの動画を見るのか?」という答えを明確にすることです。

よくある失敗パターン:

  • YouTubeに投稿して、何もしない
  • HPに埋め込んで、ユーザーに見つけさせようとしている
  • SNSで投稿するだけで、視聴への動機がない

星野リゾートの成功事例: 星野リゾートOMOは「#OMOクイズで当てようキャンペーン」として、以下の流れを設計しました。

  1. Instagram でアカウントをフォロー
  2. ブランドムービーを視聴
  3. 動画に隠された答えを見つけてクイズに回答
  4. 正解するとスペシャルプランの予約ができる

つまり、見込み客にとって「動画を見ないと答えられないクイズがある」という動機が明確に存在していたわけです。

企業での実装方法:

  • キャンペーン(クイズ、抽選、限定情報など)と動画を組み合わせる
  • 営業メール内に「このメール内の動画を見ると、限定資料がダウンロードできます」という導線を作る
  • サービス紹介ページで「動画を見た方限定のプランが利用できます」と明記する

ポイント2:冒頭3秒で「見たい」に変える情報設計

SNSユーザーがスクロール中に動画に出会ったとき、判断にかかる時間は平均3秒です。この冒頭3秒で視聴者の興味をひかなければ、スクロールされてしまいます。

設計の具体例:

要素効果的な例効果が薄い例
冒頭映像街の美しい風景、ホテルの非日常感をすぐに映すロゴやテキストのみ
効果音視聴者の注意を引く自然な音(波音、鳥の声など)無音または淡々とした BGM
テキスト「このクイズの答えはどこだ?」などの問いかけ会社名や商品名のみ

ポイント3:複数プラットフォームへの配置戦略

重要な認識: 1つの動画を制作したら、1つのプラットフォームに投稿して終わり—という考え方は、機会損失です。

複数配置のメリット:

  • ユーザーの接触頻度が増加する
  • 各プラットフォームのアルゴリズムに有利に働く
  • 1つのプラットフォームのアップデートに依存しない

星野リゾートの実装例:

プラットフォーム活用方法期待効果
Instagram 投稿フィード投稿でブランドムービー公開リーチ数、エンゲージメント
Instagram ストーリーズ短編版で再度露出継続的な接触
YouTubeフル動画を公開、キャンペーン連携長尺コンテンツの配置
DM 自動応答クイズ回答時にメッセージ自動返信即座の予約誘導

ポイント4:見込み客を「行動」させるまでの導線設計

動画を見た後、何も行動喚起がなければ、視聴はそこで終わります。重要なのは、「視聴」から「行動(予約、問い合わせ、資料請求など)」へ導く導線です。

具体的な導線の例:

営業動画の場合:

  1. 営業メールで短編動画を埋め込む
  2. 「動画を見た方向けの資料を以下からダウンロードできます」とリンク記載
  3. ダウンロード時にメールアドレス取得
  4. 自動でフォローアップメールを送信

サービス紹介動画の場合:

  1. HP の「サービス紹介」ページに動画を埋め込む
  2. 動画直下に「詳しい内容は、以下の資料をご参考ください」と CTA 配置
  3. 資料ダウンロード後、営業担当から連絡

採用動画の場合:

  1. キャリアサイトや採用ページに動画配置
  2. 「この動画を見た方限定の説明会」を企画
  3. SNS でリマインド通知を送信

ポイント5:「測り方」を制作前に決める

最後に、最も重要なのに見落としやすいのが、成果測定の設計です

制作前に「何を測定するか」を決めておかないと、制作後に「効果がどうなったのか判定できない」という事態になります。

測定項目の例:

測定項目測定方法ツール
視聴数動画再生回数YouTube Analytics、SNS インサイト
視聴維持率どの部分まで見られたかYouTube Analytics
エンゲージメントいいね、コメント、シェア数SNS ネイティブツール
クリック数説明欄のリンククリックGoogle Analytics
商談化数動画経由の問い合わせ件数CRM(営業管理ツール)
予約数動画経由の予約件数予約システム、CRM

最も重要な指標: 企業の最終ゴールに応じて異なります。営業が目的なら「商談化数」、サービス紹介なら「予約数」、採用なら「エントリー数」というように、ビジネスインパクトに直結する指標を優先します。


動画制作の実務Q&A:よくある質問にお答えします

Q1:企業動画の制作期間はどのくらい?

A: 動画の種類と内容によって異なりますが、一般的には以下の目安があります。

動画の種類制作期間費用相場
短編動画(15〜30秒)2〜3週間30万円〜100万円
企業紹介動画(1〜3分)3〜6週間50万円〜200万円
アニメーション動画(1分)4〜8週間60万円〜150万円
ドキュメンタリー形式(3〜5分)6〜10週間100万円〜300万円

制作期間が長くなる要因:

  • 社内での承認プロセス
  • シナリオ(台本)の修正回数
  • 映像素材の撮影スケジュール調整
  • 修正・調整回数

Q2:自社で素材を用意する場合と、撮影を依頼する場合、費用や期間は変わる?

A: 大きく変わります。

自社素材がある場合:

  • 制作期間:短縮(1〜2週間早くなる)
  • 費用:20万円〜50万円削減

撮影から依頼する場合:

  • 制作期間:延長(ロケーション調整、出演者スケジュール調整)
  • 費用:撮影費用 30万円〜100万円が別途発生

ベストプラクティス: あらかじめ「どの素材を自社で用意できるのか」を整理して、制作会社に伝えることが、期間短縮と費用削減につながります。


Q3:動画を作った後、SNS運用や配置は自社でやるべき?それとも依頼すべき?

A: これは企業のリソースと目標によって異なります。

方針メリットデメリット
自社運用費用削減、判断が早い時間がかかる、ノウハウがない可能性
外部委託専門的な配置戦略、効果測定費用増加、意思決定が遅れる可能性
ハイブリッドバランス取れた運用社内調整が必要

推奨アプローチ: 制作会社に「初期の配置戦略と測定設計」を相談して、その後の運用は自社で実施する方法が、多くの企業で現実的です。


Q4:動画制作を依頼する際の注意点は?

A: 制作会社選びで失敗しないための3つのチェックポイント:

  1. 事例が豊富か?— 貴社と同じ業種や目的の実績がある制作会社を選ぶ
  2. 成果測定まで視野に入れているか?— 「動画を作ることだけ」ではなく、その後の配置・測定まで相談できるか
  3. 修正対応の範囲は?— 修正回数の上限、追加修正の費用基準が明確か

特に「成果測定」まで視野に入れている制作会社を選ぶことが、長期的には投資効果を高めます。


Q5:アニメーション動画と実写動画、どちらを選ぶべき?

A: 用途や目的で使い分けます。

形式向く場面向かない場面
アニメーション動画複雑な説明、抽象的なサービス、一貫性が必要信頼感重視の場面(採用など)
実写動画企業イメージ、採用、体験の紹介複雑な説明が必要な場合

ハイブリッド案: サービス紹介は実写で企業イメージを示し、機能説明はアニメーションで分かりやすく—という使い分けが、最近の成功事例では主流です。


動画制作で成果を出すための最終チェックリスト

依頼前に、以下の項目を確認しておくと、制作がスムーズに進みます。

  •  動画の最終ゴール(商談化、予約、採用応募など)が明確か
  •  見込み客を「動画に導く動機」が設計されているか
  •  複数プラットフォームでの配置場所が想定されているか
  •  視聴後の行動導線(CTA)が決まっているか
  •  成果測定の項目と測定方法が決まっているか
  •  必要な素材(テキスト、映像、音声など)の準備が整っているか
  •  制作会社との修正範囲と費用条件が明確か
  •  制作期間とスケジュールに余裕があるか

さいごに:動画制作は「投資」である

企業動画の制作は、決して「流行だから作っておこう」という類のものではありません。戦略を持った「投資」 です。

星野リゾートOMOの事例が示しているのは、単に「きれいな動画を作った」のではなく、

  1. 見込み客を動画に導く動機設計
  2. 視聴から行動へつなぐ導線設計
  3. 複数プラットフォームでの接触戦略
  4. ビジネスインパクトまで追跡する測定設計

—この4つが揃ったときに、はじめて動画の力は最大化される、ということです。

「視聴数が3倍になりました」という成果よりも、「予約数が9倍になりました」という成果にこそ、価値がある。

もし貴社の動画制作について、このような視点から相談したいとお考えでしたら、いつでもお気軽にご連絡ください。


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