「営業資料を動画化したい」「導入事例をわかりやすく伝えたい」——企業の営業やマーケティング部門で、こうした相談が増えています。
しかし、いざ動画制作を始めようとすると、多くの企業が同じ課題にぶつかります。「何から準備すればいいのか」「制作会社に何を伝えればいいのか」「実際にはいくらかかるのか」。
本記事では、動画制作の依頼を検討している企業の担当者に向けて、失敗しない5つの準備ステップと、実務的な費用・期間・注意点をお伝えします。SmartHRという企業の事例も交えながら、「動画制作で本当に成果を出すために必要なこと」を解説していきます。
企業が「動画制作で失敗する」3つのパターン
目次
動画制作の依頼を受けていると、以下のようなケースで課題が生じることがあります。
パターン①「作ってから使い方を考える」失敗
制作会社に「いい動画を作ってください」と依頼するだけで、「この動画をいつ、どこで、誰に見せるのか」という運用方針がないまま制作が進む。完成した動画が営業現場で全く使われないというケースです。
SmartHRのサービスデザインビデオユニットは、この失敗を避けるため、企画段階から営業やマーケティングチームと一緒に考えることを重視しています。
パターン②「完璧な企画書を作ってから進める」失敗
「完璧な企画書がないと始められない」という思考で、企画に数ヶ月費やしてしまい、結果的に実装が遅れるケース。実際には、社内のニーズを聞きながら、試行錯誤で進める方が、多くの企業にとって現実的です。
パターン③「1本目から高クオリティを求める」失敗
制作予算が限られているのに、1本目の動画に「テレビCM並みのクオリティ」を期待してしまい、予算が足りなくなるケース。実は、施策の内容や目的に応じて、クオリティのレベルを使い分けることが、スケーラブルな動画活用の鍵になります。
動画制作を成功させるための5つの準備ステップ
それでは、動画制作依頼の前に、企業の担当者が準備すべき5つのステップを解説します。
ステップ①|「目的」を明確にする(所要時間:1〜2日)
最初のステップは、「なぜ動画が必要なのか」という目的を言語化することです。
よくある目的として、以下のようなものがあります:
- 新規営業の初期接触段階:見込み客の理解度を短時間で高めたい
- 検討段階のナーチャリング:競合との比較時に、自社の強みを視覚的に伝えたい
- 導入後のサポート:ユーザーが機能をより活用できるようにしたい
- 採用強化:求職者に企業文化や仕事の面白さを伝えたい
目的が定まらないまま制作を進めると、「完成したけど、実は営業現場で使われていない」という事態が起きやすくなります。
具体的なアクション: 営業チーム、マーケティングチーム、人事など関連部署と30分程度のミーティングを開き、「この動画で解決したい課題は何か」を3つ以内にまとめてください。
ステップ②|「視聴者」を定義する(所要時間:1日)
次に、「この動画を誰に見てもらうのか」という視聴者像を明確にすることが重要です。
同じ「営業動画」でも、以下のように視聴者によって内容や表現は大きく異なります:
| 視聴者像 | 必要な情報 | 動画の長さ |
|---|---|---|
| 初めて自社を知る見込み客 | サービスの全体像と導入メリット | 3〜5分 |
| 導入を検討中の企業の決裁者 | 導入実績と具体的な成果 | 1〜3分 |
| すでに導入済みのユーザー | 機能の使い方や活用シーン | 1〜2分 |
| 採用候補者 | 企業文化や仕事内容 | 3〜5分 |
具体的なアクション: 上記のように、視聴者ごとに「年代」「職種」「課題」「情報リテラシー」などを書き出し、最も重点を置く視聴者を1つに絞ってください。
ステップ③|「配置とタイミング」を決める(所要時間:2〜3日)
動画を作ったあとに「どこで使うのか」を決めるのではなく、事前に「どこで、いつ、どの形式で見せるのか」を決めておくことが大切です。
- HP内での埋め込み:ページの何番目に配置するか
- 営業資料への組み込み:商談のどのタイミングで見せるか
- メール配信:見込み客のナーチャリング段階で、どの段階で送るか
- SNS・YouTube:フル動画か短編集版か
実は、配置とタイミングの最適化で、動画の効果は大きく変わります。同じ動画でも、見込み客が「初期接触段階」で見るのと「最終検討段階」で見るのでは、反応が異なるのです。
具体的なアクション: 自社の営業プロセスを図に描き、「どのステップで、どの形式の動画が必要か」をマッピングしてください。
ステップ④|「予算と期間を把握する」(所要時間:3〜5日)
多くの企業が見落とすステップが、事前に予算と期間の相場を知ることです。
一般的な動画制作の費用相場
| 動画タイプ | 長さ | 相場 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| サービス紹介動画(実写+テロップ) | 2〜3分 | 50万〜150万円 | 導入後のメリットを視覚化 |
| 導入事例動画(インタビュー形式) | 3〜5分 | 60万〜200万円 | ユーザーの現実的な活用シーンを表現 |
| 営業説明動画(アニメーション) | 1〜2分 | 40万〜120万円 | 複雑な機能をシンプルに説明 |
| オンボーディング動画(短編) | 30秒〜2分 | 20万〜50万円 | ユーザーの初期活用をサポート |
| 採用コンセプト動画(対談形式) | 3〜10分 | 80万〜300万円 | 企業文化や仕事の魅力を伝える |
注意: 上記はあくまで一般的な相場です。制作会社によって、また要望内容によって大きく変動します。
制作期間の目安
- 企画段階:1〜2週間
- 撮影・素材収集:1〜3週間
- 編集・修正:1〜2週間
- 納品:1週間
合計で、最短でも4週間程度は見ておいた方が安全です。
具体的なアクション: 経営層や関連部署と「動画制作に使える予算」「いつまでに完成させたいか」を確認し、複数の制作会社に見積もりを依頼してください。
ステップ⑤|「修正プロセスを事前に定める」(所要時間:1日)
制作会社との契約前に、**「修正は何回まで対応するのか」「修正の期限は何日以内か」**といった進め方ルールを決めておくことが重要です。
多くの企業と制作会社のトラブルは、ここで生まれます。
- 修正の回数が際限なく増える
- 修正期限が曖昧で、納品がズルズル延びる
- 追加修正が発生するたびに追加費用が発生する
具体的なアクション: 制作会社との打ち合わせ時に、以下を明記した契約書または覚書を作成してください。
Copy・修正対応:初回納品後、修正は2回まで(大幅な構成変更を除く)
・修正期限:修正依頼から5営業日以内に対応
・追加修正料金:3回目以降は1回あたり○○円の追加費用
・最終納品期限:〇月〇日
よくある質問|動画制作で企業担当者が悩むこと
Q1. 「複数の動画を作る場合、同時に進めた方が安い?」
A. 場合による、が答えです。
同時進行のメリット:
- 撮影を1日で複数本まとめてできるため、撮影コストが削減できる
- スタッフのスケジュール調整が効率的
同時進行のデメリット:
- 1本目の反応を見てから2本目を調整する余地がなくなる
- 試行錯誤の時間が取れない
推奨: 最初は「1本目を完成させて、社内や営業現場での反応を見る」→「その反応をもとに2本目を企画する」というステップを踏む方が、結果的に効果が高くなります。
Q2. 「素材(写真や音声)は自社で用意した方がいい?」
A. 基本的には、制作会社に相談することをお勧めします。
理由:
- プロのカメラマンやライターと比べて、素材のクオリティにばらつきが出やすい
- 動画の雰囲気を統一するために、プロが選定・加工した素材の方が効果的
ただし、以下のような場合は自社で用意するのが有効です:
- 実際のオフィス風景やユーザーの声(素材感が重要)
- 自社プロダクトの実装画面(実際の操作画面など)
- 経営陣や実務者のインタビュー映像
推奨: 制作会社と相談して、「自社で用意すべき素材」と「制作会社が手配すべき素材」を分け合う方が、効率的かつコスト最適になります。
Q3. 「動画を作った後、どうやって効果を測定する?」
A. 以下の指標を組み合わせて測定することをお勧めします。
定量指標(数値で測れるもの):
- 再生回数:何人が動画を見たか
- 視聴完了率:動画の最後まで見た人の割合
- クリック率:動画内のリンクをクリックした人の割合
- 商談化率:動画を見た見込み客の中から、商談に進んだ人の割合
定性指標(感覚的に測れるもの):
- 営業チームからの声:「この動画、商談で使いやすい」という現場の評価
- ユーザーからのフィードバック:「この動画でようやく機能が理解できた」という声
推奨: 特に重要なのは「営業チームの声」です。数値が良くても営業が使わない動画もあれば、数値は控えめでも営業から「これは使える」と評価される動画もあります。
Q4. 「動画制作会社はどうやって選べばいい?」
A. 以下の3点をチェックすることをお勧めします。
- 過去の実績・ポートフォリオ
- 自社と同じ業界や課題を扱った事例があるか
- クオリティは期待に合っているか
- 対応範囲
- 企画段階から関与してくれるか、それとも納品物の制作のみか
- 修正対応の範囲と回数は
- コミュニケーション
- 企画段階で営業チームの話を聞いてくれるか
- 修正時の対応は迅速か
注意: 最も安い会社を選ぶのではなく、「自社の課題を理解し、試行錯誤で一緒に進められる会社」を選ぶことが重要です。
Q5. 「スマートフォン向けの短編動画も必要?」
A. 絶対に必要とは言えませんが、あると便利です。
理由:
- 営業がSNS(X、LinkedIn)で見込み客にアプローチする際、短編動画があると反応率が上がりやすい
- メール配信時に「長い動画は開かないが、15秒の短編なら見てもらいやすい」
コスト効率の良い方法:
- 完成した2〜3分の動画から、15秒〜1分の抜粋版を制作会社に依頼する
- フル動画の制作費が50万円なら、短編化は5万〜15万円程度で対応可能
推奨: まずはフル動画を作り、営業現場での反応を見てから、短編版の必要性を判断する方が無駄がありません。
実例|SmartHRが実装した動画活用の現状
ここで、実際の企業の事例を紹介することで、動画制作の現実をお伝えします。
SmartHRのビデオユニット設立背景
クラウド人事労務ソフトを展開する株式会社SmartHRは、2024年1月にサービスデザインビデオユニットという部門を立ち上げました。
複数のプロダクトを展開する中で「複数機能を横断してご利用いただくユースケースをどう伝えるか」という課題が生まれ、動画という手段に着目したのです。
SmartHRが制作している4つの動画タイプ
SmartHRのビデオユニットは、現在以下の4種類の動画を制作しています:
- 機能紹介動画(実写+アニメーション)
- 導入後の利便性を視覚化
- 複雑な機能をシンプルに説明
- 導入事例動画(インタビュー形式)
- ユーザー企業の現実的な活用シーンを記録
- 検討段階での不安を払拭
- ユーザーコミュニティ向けビギナーガイド(短編)
- コミュニティ参加という心理的ハードルを取り除く
- ユーザーの定着をサポート
- 採用用動画(対談形式)
- エンタープライズ開拓の魅力を伝える
- 採用候補者の理解度を高める
SmartHRが直面している現実的な課題
ここが重要なのですが、SmartHRのビデオユニットは「完璧な戦略を引いて実装している」わけではなく、以下のような現実的な課題を抱えています:
- 人手不足:動画制作の実務を1名で担当
- 能動的な活動ができていない:社内からの依頼に対応する状態で、主体的な提案ができていない
- 社内認識の不足:社内アンケートで「動画でやりたいことはあるけど、依頼方法がわからない」という声が出ている
- 需要確認がようやく始まった:社内のニーズ確認ヒアリングを今期から開始したばかり
この事例から学べること: 大企業ですら、動画活用は「完成系」ではなく「試行錯誤の進行形」だということです。完璧さを目指さず、社内のニーズを聞きながら、小さく試して広げていく。これが現実的なアプローチです。
動画制作を依頼する前のチェックリスト
実際に制作会社に依頼する前に、以下の項目を確認してください:
- 動画を作る目的が明確か(新規営業か、ナーチャリングか、採用か)
- 視聴者像が定まっているか(初期接触か、最終検討か)
- 配置とタイミングが決まっているか(どこで、いつ見せるか)
- 予算と期間の見通しがあるか(幾らで、いつまでか)
- 修正プロセスのルールを事前に定めるか
- 複数の制作会社に見積もりを依頼したか
- ポートフォリオで過去の実績を確認したか
- 企画段階から関与してくれる会社か確認したか
このチェックリストを埋めることで、制作会社との打ち合わせもスムーズになり、ズレが少なくなります。
さいごに|動画制作は「手段」であって「目的」ではない
動画制作を検討している企業の担当者へ、最後にお伝えしたいことがあります。
動画は、課題を解決するための「手段」です。目的ではありません。
「とりあえず動画を作ってみたい」という感覚で進めると、完成後に「これ、誰が見るの?」「営業現場で使われていない」という事態が起きやすくなります。
SmartHRの例も、大企業ですら人手不足で試行錯誤しながら進めている現実を示しています。つまり、動画活用は最初から完璧を目指すのではなく、社内のニーズを聞きながら、小さく試して、その反応をもとに広げていくというプロセスが最も効果的なのです。
もし、動画制作について具体的な相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。貴社の課題や現状をお聞きした上で、「本当に必要な動画は何か」を一緒に考えさせていただきます。
【無料相談のご案内】
「うちの場合、どんな動画が必要?」「制作の進め方が不安」「実際にいくらかかる?」
こうしたご質問や相談にお返事いたします。
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別途、ポートフォリオもご準備しております。過去の制作実績をご参考いただき、「こんな感じの動画を作ってほしい」というイメージをお持ちでしたら、初回の打ち合わせでお伝えください。

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