「内定を出したのに辞退されてしまった」「採用にかかったコストが無駄になった」——採用担当者なら誰もが経験する悩みです。実は、内定辞退の原因の多くは「選考時の期待」と「内定後の不安」のギャップにあります。
新卒採用の場合、学生は複数社から内定をもらい、入社まで数ヶ月の時間があるため、その間に気持ちが揺らぎやすい状態にあります。一方、中途採用では、現職との葛藤や退職手続きの煩雑さから、より条件の良い別企業への転職を考え直すケースが多くあります。
こうした内定辞退を防ぐために、多くの大手企業が採用動画を活用した個別フォロー施策を実践しています。本記事では、内定辞退防止の仕組みを深掘りし、新卒・中途それぞれの対策、採用動画の活用法、そして実装の具体的なステップを解説します。
内定辞退が起きる本当の理由を知る
目次
なぜ優秀な学生ほど辞退するのか
内定辞退は、必ずしも採用企業の問題とは限りません。むしろ、優秀で市場価値の高い学生ほど、複数社から内定を獲得し、その中から最適な企業を選別しようとする傾向があります。
採用動画に関する民間調査(moovy「採用動画のトレンド調査2026」)では、給与・仕事内容など他の条件が同じ2社で迷ったとき、**採用動画の有無・質が最終判断に影響すると回答した人が87.7%**に達しました。
ただし、この数字は重要な前提条件があります。 この調査の対象は「すでに採用動画を1本以上見たことがある20~40代(333名)」に限定されており、就職活動経験者全体の意見ではありません。つまり、採用動画への関心が高い層のみへの調査であり、採用動画の有効性に対する肯定的なバイアスが含まれている可能性があります。
それでもなお、採用段階での情報接触が内定者の判断に影響を与えることは、企業が内定後のフォローコミュニケーションに力を入れるべき理由を示唆しています。
「期待と現実のギャップ」が内定辞退を招く
内定辞退の根本的な原因は、次のようなギャップにあります。
選考中に聞かされること:
- 「君に期待している」
- 「この部署で活躍できる」
- 「成長できる環境だ」
内定後に感じる不安:
- 「本当にこの会社でいいのだろうか」
- 「配属先の現場の雰囲気は分からない」
- 「実際に働く先輩たちは何を考えているのか」
内定者はこの不安を抱えたまま、入社日を迎えます。その間に競合他社からのアプローチがあったり、より魅力的な企業オファーを受け取ったりすれば、容易に心が揺らぐのです。
採用市場における内定辞退の現状
民間調査(マイナビキャリアリサーチLab)では、内定辞退率が「5割以上」と回答した企業の割合が増加傾向を示しています。2019年卒では21.1%だった企業が、2026年卒では41.5%へと倍増し、内定辞退への対策が経営課題化していることが分かります。
一方、厚生労働省が公表している「内定取消し」(企業側から学生への取消し)の件数は、年間47人程度(令和6年3月卒対象)に留まっており、内定辞退問題の主要因は「学生側の辞退」であることが明白です。
採用動画による内定辞退防止の仕組み
なぜ採用動画が効果的なのか
採用動画が内定辞退防止に有効な理由は、テキストや資料では伝わらない「人間的な信頼」を構築できるからです。
同じmoovyの調査では、採用動画を視聴した人の90.6%が応募意欲や判断にプラスの影響を受けたと回答しています。
ただし、この数字の内訳を見ることが重要です。
- 応募意欲が高まり、実際に応募した:26.1%
- 応募意欲は高まったが応募はしなかった:44.4%
- 応募するか迷う後押しになった:20.1%
つまり、「プラスの影響」の定義は広く、実際に行動変容(応募)につながったのは26.1%に過ぎません。採用動画の効果は「心理的な好印象の形成」には優れていますが、最終的な行動転換には、さらに具体的で個別的なフォローが必要であることを示唆しています。
個別メッセージによる限定感と信頼
採用動画が内定辞退防止に有効である条件は、以下の3つです。
1. 表情・声のトーン・身振りから「本気度」が伝わる
企業の期待を伝える際、テキストだけでは「定型的で本当か不明」という疑念が残ります。一方、動画であれば、配属先の責任者や先輩の表情や声のトーンから「この企業は本当に君を必要としている」という確信が生まれます。
2. 個別メッセージによる限定感
全内定者向けの一般的な研修とは異なり、「あなただけへのメッセージ」という限定感が、内定者の心理的つながりを強くします。この個別対応により、他社の内定との比較軸が大きく変わります。
3. 配属先のリアルな情報を提供できる
採用動画では、配属予定の先輩が「具体的にどんな業務をしているのか」「チームはどんな雰囲気か」といったリアルな情報を伝えられます。これにより、内定者が抱く「入社後のギャップ」が最小化されます。
【新卒採用】内定辞退防止の具体的な対策
新卒採用で内定辞退が多い理由
新卒採用では、以下の理由から内定辞退が多く発生します。
- 複数社内定による選別: 優秀な学生ほど複数社から内定をもらい、最後まで企業を比較検討する
- 長い内定期間: 入社まで数ヶ月の期間があり、その間に気持ちが揺らぎやすい
- 不確実性への不安: 初めての就職のため、未知の環境に対する不安が大きい
- 他企業のアプローチ: 内定承諾後も、競合企業からのアプローチを受ける可能性がある
新卒向けの内定辞退防止対策3つ
対策1:配属部門の役員・先輩からの個別メッセージ動画
新卒学生にとって「実際に働く先輩」の声は極めて重要です。配属予定部門の役員や活躍社員が、以下の内容を個別動画で伝えることが効果的です。
- 「なぜこの学生を採用したのか」という採用理由
- その学生固有の強みが、部署でどう活かせるのか
- 部署の雰囲気やチームの特徴
- 入社後のキャリアパス
制作の目安: スマートフォンで撮影可能。1人あたり3~5分、1社あたり10~20本程度
対策2:内定者向けの実務型インターンシップ
業界大手が実践している施策として、内定者向けの実務型インターンシップ(内定者バイト)があります。サイバーエージェントの例では、内定者の約9割弱が内定者インターン制度を利用しており、実務経験を通じた組織理解と人間関係構築が実現されています。
これにより、内定者は以下が実現されます。
- 実務を通じた会社理解の深化
- 配属先のチームメンバーとの関係構築
- 入社後のギャップ最小化
- 会社への帰属意識の向上
ただし注視すべき点: サイバーエージェントの内定者バイト制度は、主に「入社時の戦力化」を目的としており、直接的な「内定辞退防止策」というより、結果的に内定承諾率や定着率の向上に寄与しているとされています。
対策3:段階的なフォローコミュニケーション
内定直後、3ヶ月前、1ヶ月前、1週間前——といったタイミングで、段階的なフォローを行うことが重要です。
- 内定直後: 採用担当者からの個別面談で、採用理由や期待を伝える
- 3ヶ月前: 配属予定部門からのメッセージ動画配信
- 1ヶ月前: オンボーディング資料やチーム紹介の共有
- 1週間前: 入社直前の最終フォローメッセージ
このタイミング設計により、内定者の不安が段階的に払拭されていきます。
【中途採用】内定辞退防止の具体的な対策
中途採用で内定辞退が多い理由
中途採用の内定辞退は、新卒とは異なる背景があります。
- 現職での引き止め: 現雇用主が条件を改善して引き止めようとするケース
- 退職手続きの煩雑さ: 現職での引き継ぎや退職手続きの負担から、より簡単な選択肢を求める
- 入社日までの不安増大: 現職を辞めてから入社日までの間、「本当に大丈夫か」という不安が増す
- 転職先での即戦力化への不安: 新しい環境での役割や成果期待に対する不安
中途向けの内定辞退防止対策3つ
対策1:入社責任者からの直接フォロー動画
中途採用者にとって重要なのは、「配属部門で本当に必要とされているのか」という確信です。
以下の内容を、配属予定の直属上司や部門長から直接伝えることが効果的です。
- 採用に至った理由と、その人材に期待する役割
- 具体的な業務内容と成果期待
- チームメンバーの紹介
- 入社後のサポート体制
制作の目安: 5~10分程度の個別メッセージ。中途採用者の数に応じて本数を調整
対策2:退職手続きサポートと不安解消
中途採用者の多くは、現職での退職交渉に不安を感じています。採用企業側が以下をサポートすることで、辞退リスクを低減できます。
- 入社日調整のための柔軟な対応
- 現職での離職票や資格取得に関する相談対応
- 入社前研修や事前資料の提供による「準備完了」の感覚醸成
対策3:入社1ヶ月前からの定期的なタッチポイント
特に内定から入社までの期間が長い中途採用では、以下のコミュニケーションが重要です。
- 入社1ヶ月前: 部門長または人事からの個別面談動画
- 入社2週間前: 配属チームメンバーの紹介動画
- 入社1週間前: オンボーディング日程や初日の流れ説明
- 入社前日: ウェルカムメッセージ
このタッチポイントを設計することで、内定者の心理的な負担が軽減され、辞退リスクが大幅に低下します。
内定辞退防止で成功した企業事例
事例1:採用動画を活用した内定承諾率向上(moovy支援事例)
企業概要: IT・システム系企業
課題: 採用における候補者との接点が限定的で、仕事内容や社員の人柄が十分に伝わっていなかった
実施施策: 社員が登場するショート動画を制作し、選考特典として、または最終面接前のメールで配信
結果:
- 内定承諾率が30%から50%に向上
- 採用プロセス全体の効率化
出典: moovy公式コラム「採用動画の効果とは」
ポイント: 動画の活用は「選考中」という段階で活用されており、内定後のフォローに限定されていないことが特徴です。採用全段階での動画活用の有効性が示唆されています。
事例2:大手ベンチャー企業の内定者インターンシップとフォロー施策
企業概要: サイバーエージェント(従業員1,000名以上の大手ベンチャー)
課題: 新卒採用における内定辞退防止
実施施策:
- 内定者向けの実務型インターンシップ(内定者バイト)実施:約9割弱の内定者が参加
- 「ナナメン制度」(他部署の先輩がメンターとしてサポート)
- 月1回程度の内定者研修
- 配属予定部門の役員・活躍社員による部署の魅力紹介(集合形式)
効果:
- 内定承諾率の向上
- 入社後の定着率向上
- 即戦力化の加速
重要な補足: サイバーエージェントのこれらの施策は、直接的には「採用動画による個別ビデオレター」という形ではなく、集合型の研修やインターンシップが中心です。「配属先の役員が一人ひとりにビデオレターを送付する」という施策は、公式情報での確認は取れていません。
採用動画による内定辞退防止の実装ステップ
ステップ1:現状分析と施策設計
まずは、以下の情報を整理することから始めます。
- 過去1~2年の内定辞退率と辞退理由
- 採用職種別・部門別の辞退パターン分析
- 競合企業との採用条件比較
- 現在の採用フロー(内定~入社)での課題抽出
この分析をもとに、採用動画の活用方法を設計します。
所要期間: 1~2週間
ステップ2:動画コンテンツの企画・準備
次に、以下を決定します。
- 登場者の選定(役員、部門長、先輩社員など)
- メッセージ内容のブリーフ作成
- 動画の本数と配信タイミング
所要期間: 1~2週間
ステップ3:動画の制作
専門の動画制作会社に外注する場合の目安:
- 制作期間: 企画から完成まで4~6週間
- 費用: 複数本の制作時で、1本あたり10~50万円(簡易版)、50~150万円(標準版)、150~300万円(高品質版)※制作本数やクオリティにより変動
- 本数: 新卒採用の場合は10~20本、中途採用の場合は5~10本
社内で制作する場合は、スマートフォンでの撮影で対応可能。ただし、照明やマイク、編集に配慮が必要です。
所要期間: 2~4週間
ステップ4:配信システムの構築
動画の配信方法を決定します。
- 限定公開リンク: クラウドストレージやYouTubeの限定公開機能を活用
- 採用管理システム(ATS)への統合: HRtechツール内での配信
- メール配信: 内定者向けメールに動画リンクを埋め込み
所要期間: 1週間
ステップ5:配信と効果測定
計画に基づいて動画を配信し、以下の指標を追跡します。
- 動画の視聴率と視聴完了率
- 内定承諾率の推移
- 内定辞退率の改善
- 入社後の満足度調査
所要期間: 継続的(3~6ヶ月)
採用動画制作の費用と期間
制作費用の相場
| 動画タイプ | 制作本数 | 費用帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 簡易版(スマートフォン撮影) | 10本 | 10~30万円 | 低コスト、短期制作 |
| 標準版(プロ撮影、基本編集) | 10本 | 50~150万円 | バランス型、品質重視 |
| 高品質版(プロ撮影、凝った編集) | 10本 | 150~300万円 | ハイエンド、ブランド価値向上 |
注記: 上記の費用は複数本の制作を前提にした目安です。1本あたりの単価は制作ボリュームにより大きく変動します。
制作期間の目安
| プロセス | 期間 |
|---|---|
| 企画・打ち合わせ | 1~2週間 |
| 動画制作(撮影・編集) | 2~4週間 |
| 修正・調整 | 1週間 |
| 納品 | 1日 |
| 合計 | 4~8週間 |
内定辞退防止に関するよくある質問
Q1:採用動画がなくても、電話やメールでのフォローで十分では?
A: 完全に同等とは言えません。ただし、テキストや音声コミュニケーションが無意味なわけではありません。
採用動画は「視覚情報」による信頼構築に優れていますが、既存のメールや電話でも丁寧な個別対応による信頼醸成は可能です。重要なのは、個別性と継続性です。「あなた専用のメッセージ」と「段階的なタッチポイント」を設計することで、採用動画なしでも内定辞退を防ぐことはできます。
ただし、採用動画があれば、より短い時間で「本気度」が伝わるため、効率性の観点からは有利です。
Q2:中小企業でも採用動画の制作は可能か?
A: はい、可能です。実は、大手企業だけが採用動画を活用しているわけではありません。中小企業でも、スマートフォンでの撮影で対応可能です。
重要なのは「映像の品質」よりも「メッセージの個別性」です。シンプルな撮影であっても、「あなたのために用意したメッセージ」という限定感が、内定辞退防止に大きく貢献します。
Q3:どのタイミングで動画を配信するべきか?
A: 内定直後ではなく、入社直前のギリギリのタイミングがもっとも効果的です。以下の段階的なアプローチをお勧めします。
- 内定直後: 採用担当者からの個別面談で期待を伝える
- 3ヶ月前: 配属部門からの情報提供
- 1ヶ月前: オンボーディング情報の共有
- 1週間前: 最終フォロー動画配信
Q4:内定者全員に個別動画を用意する必要があるのか?
A: 理想的には個別動画が効果的ですが、予算の制約がある場合は、以下の方法も有効です。
- 部門ごとに1本の動画で、複数の内定者に配信
- 職種別に1本の動画を制作
- 個別な挨拶部分だけ短編で、共通部分は長編で補完
重要なのは「個別性の工夫」と「配属部門からのメッセージ」です。
Q5:採用動画の効果を測定するには?
A: 以下の指標を追跡することをお勧めします。
- 視聴率: 何%の内定者が動画を視聴したか
- 視聴完了率: 動画を最後まで見た割合
- 内定承諾率: 前年度との比較
- 内定辞退率: 施策導入前後での改善率
- 入社後の満足度: 入社後3ヶ月での満足度調査
これらのデータをもとに、施策の効果を定量的に把握できます。
採用動画制作時の注意点
避けるべき3つのNG
1. 過度に豪華な制作
採用動画では、映像の美しさよりも「メッセージの真正性」が重要です。過度に演出された映像よりも、配属部門の責任者が率直に思いを伝える映像の方が、はるかに説得力があります。
2. テンプレート的なメッセージ
「成長できる環境です」「やりがいのある仕事です」といった一般的なメッセージでは、内定者の心に響きません。その学生固有の強みや、なぜこの学生を採用したのかという理由を、具体的に言語化することが重要です。
3. 配信後のフォローなし
動画を配信して終わりではなく、その後の段階的なフォローコミュニケーションが不可欠です。動画配信後に、採用担当者からの個別連絡や、入社前研修との連携を通じて、継続的に内定者の不安を払拭することが重要です。
重要な限定事項:採用動画の効果について
本記事で紹介した統計データ(87.7%、90.6%)は、採用動画を既に見たことがある求職者への調査に基づいています。つまり、採用動画への関心がもともと高い層のみへの調査であり、すべての求職者層に同等の効果があるわけではないという点に注意が必要です。
また、採用動画が「応募意欲を高める」ことと「実際の応募につながる」ことは別であり、内定辞退防止においても、動画単独では完全ではなく、段階的で継続的なコミュニケーション設計が重要であることを強調したいのです。
最後に:内定辞退防止は「経営課題」への投資
内定辞退防止は、単なる「採用タスク」ではなく、経営課題です。採用にかかったコストが無駄になるだけでなく、組織の成長機会を失うことにもつながります。
採用動画を活用した個別フォローは、以下の効果をもたらす可能性があります。
- 内定承諍率の向上の可能性(事例では30~50%の改善)
- 採用コストの削減可能性
- 入社後の定着率向上
- 企業ブランドの向上
貴社の採用課題に合わせた、カスタマイズされた採用動画戦略について、詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
お気軽にご相談ください
採用動画の制作や内定辞退防止の施策について、ご不明な点やご質問がございましたら、以下からお気軽にお問い合わせください。
採用課題の分析から、最適な動画活用方法の提案まで、時間無制限の無料相談にて対応させていただきます。
貴社の採用動画戦略を一緒に考えます。

Comments are closed