オンボーディング動画の事例から学ぶ│導入後の顧客定着戦略3選

導入したのに顧客が使ってくれない。そんな悩みを抱えるSaaS企業の経営者・マーケティング担当者は多いのではないでしょうか。実は、その原因の多くは「導入直後の3ヶ月」にあります。この期間にユーザーが実際に使い始めるかどうかで、その後の解約率が大きく左右されるのです。本記事では、継続率99%を実現している楽楽精算というサービスの事例を通じて、顧客定着に欠かせない「オンボーディング動画」の設計方法を解説します。実企業の成功事例から学べるオンボーディング動画の活用法、制作時の注意点、費用相場まで、実務的な情報をお届けします。


なぜ「オンボーディング動画」が顧客定着に効くのか

SaaS企業が直面する「導入後3ヶ月の離脱」という課題

SaaS企業にとって、新規顧客の離脱は最大の経営課題です。特に「導入から3ヶ月」という期間が、継続か解約かの分岐点になることをご存知でしょうか。

業界平均の解約率(月次)は3~5%程度。つまり、100社導入した企業の3~5社が毎月辞めていくということです。このペースが続くと、営業で新規獲得した顧客が、次々と流出していく悪循環に陥ります。

新規導入企業が「放置される」理由は、大きく3つです。

第一は「初期設定の複雑さ」です。 経費精算システムであれば、部門ごとの承認フロー設定、経費カテゴリの定義など、企業によってカスタマイズが必要な項目が多く存在します。管理者がここで躓くと、利用者への展開が進みません。

第二は「現場への情報伝達の不足」です。 経理部門が準備していても、営業や現場の従業員には「新しいシステムが導入された」という情報が十分に伝わらないことがあります。気づいたときには、紙での業務に戻ってしまっている、という事態も珍しくありません。

第三は「導入直後のサポート工数の不足」です。 カスタマーサクセス部門の人手が限られていると、全ての新規顧客に丁寧にオンボーディングを行うことが物理的に不可能になります。

こうした課題の解決策として、注目されているのが「オンボーディング動画」です。


「オンボーディング動画」による解約防止の仕組み

オンボーディング動画とは、新規導入企業のユーザーが「初期設定から実際の運用まで」をスムーズに進められるよう、段階的に情報を提供する動画ガイドです。単なるマニュアル動画ではなく、ユーザーが「困ったときに自分で探して見ることができる」という体験設計が重要です。

オンボーディング動画が効果的である理由は、以下の3点にあります。

まず、ユーザーの学習負荷を最小化できるという点です。すべての機能を詳しく説明するのではなく、「明日から仕事で使える最小限の知識」に絞ることで、取り組みやすさが格段に向上します。

次に、サポート部門の工数を削減できるという点です。よくある質問を動画化することで、カスタマーサクセス部門が同じ質問に何度も答える手間を減らし、より深い顧客支援に注力できるようになります。

最後に、ユーザーの「自分で解決する」という行動パターンが定着するという点です。困ったときにサポートに連絡するのではなく、まず自分で動画を探すという習慣がつくことで、顧客のシステム理解が深まり、結果として利用定着につながります。


楽楽精算の事例に学ぶ「オンボーディング動画」戦略

事例企業・楽楽精算のスペック(継続率99%の背景)

ここで、実際の成功事例として「楽楽精算」というサービスを紹介します。楽楽精算は、株式会社ラクスが提供する経費精算クラウドシステムです。交通費、出張費、交際費などの経費申請から承認、仕訳までを一気通貫で管理できるSaaS型のサービスです。

楽楽精算のスペックは、以下の通りです。

  • 累計導入社数No.1(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ)
  • 利用継続率99%(2025年3月期実績)
  • 月次解約率0.25%(MRRベース)(ラクス決算説明資料)
  • 業界平均の解約率3~5%と比べて、約20倍低い水準

この驚異的な継続率を支えているのが、「楽楽精算サクセスナビ」という専用のサポートサイトです。ここに用意されているオンボーディング動画が、新規導入企業の顧客定着を大きく支えているのです。


事例に見る「オンボーディング動画」の3つの活用ポイント

楽楽精算の事例から、オンボーディング動画の活用において重要な3つのポイントが見えてきます。

ポイント①:管理画面とは別のサポートサイトを用意すること

楽楽精算は、「楽楽精算サクセスナビ」という独立したWebサイトをオンボーディング動画の配信プラットフォームにしています。メインの管理画面とは分けることで、ユーザーが「困ったことを検索する」という行動パターンが自然につくのです。管理画面内に全ての情報が埋め込まれているのではなく、ユーザーが「自分で探す」という仕組みが、実は継続率向上の鍵になっています。

ポイント②:段階的なスコープ設計で「削ぎ落とし」を徹底すること

楽楽精算のサクセスナビには、初期設定段階では「ログイン方法」「申請者の初期登録」「承認フロー設定の基本」という3つのステップだけに絞られたオンボーディング動画が用意されています。詳しい説明は別の動画で補足する、というように段階を分けることで、利用者の「学習負荷」を最小化しているのです。

ポイント③:導入後の各段階で新しい課題に対応した動画を継続配信すること

初期設定だけでなく、「電子帳簿保存法」「ICカードオプション」「ワークフローオプション」など、導入後に直面する様々な課題に対応したオンボーディング動画が用意されています。つまり「導入直後だけのサポート」ではなく、「導入後6ヶ月、1年と、その時々のユーザーの課題に応じた継続的なサポート」があるからこそ、高い継続率を実現しているのです。


顧客定着に成功した「オンボーディング動画」の3つの設計戦略

戦略1|スコープ設計(楽楽精算の事例から)

「オンボーディング動画」を効果的に設計するうえで、最も重要なのが「スコープ設計」です。つまり、「何を入れるか」「何を削ぎ落とすか」を徹底的に考え抜くということです。

楽楽精算の事例では、初期設定段階のオンボーディング動画を「3ステップだけ」に限定しています。これは、新規導入企業の管理者が「明日から実際に仕事で使える」という最小限のスコープに絞ったからです。

実務的には、以下のような観点でスコープを設計することをお勧めします。

まず、「ユーザーの実装可能性」を考慮します。複雑な設定が多すぎると、導入企業の管理者が途中で放棄してしまう可能性があります。「3ステップなら、週末に時間を作れば対応できそう」という心理的ハードルの低さが重要です。

次に、「その後のビジネスへのインパクト」を考慮します。全ての機能ではなく、「これがなければ、実際の業務が回らない」という機能だけに絞ることで、優先順位が明確になります。

最後に、「サポート部門の工数」を考慮します。よくある質問ほど、動画化の効果が高いはずです。カスタマーサクセス部門に「これはよく聞かれますか」と確認し、動画化すべき内容を特定することが重要です。


戦略2|配信タイミング設計(楽楽精算の事例から)

オンボーディング動画の「どこで、いつ見せるか」というタイミング設計も、同じくらい重要です。

楽楽精算の事例では、ユーザーが「楽楽精算サクセスナビ」というサポートサイトにアクセスしたときに、その瞬間の悩みに対応したオンボーディング動画が見つかるという設計になっています。

つまり、ユーザーが「困る前に見せる」のではなく、「困ったときにすぐに見つかる」という構造なのです。これにより、ユーザーはわざわざカスタマーサクセス部門に連絡するのではなく、まずは自分で解決策を探すという行動パターンが定着するのです。

実務的には、以下のような配信タイミングの設計が考えられます。

導入初日~1週間:管理者向けオンボーディング動画 実際のシステム導入が始まる段階で、管理者が「まず何をするか」を動画で示す。

1週間~2週間:現場従業員向けオンボーディング動画 申請者となる従業員に対して、「このシステムのメリット」と「基本的な操作」だけを伝える。

2週間~1ヶ月:トラブルシューティング動画 ユーザーが実際に使い始めて「あれ、ここはどうするんだろう」という瞬間に対応する動画。

1ヶ月以降:応用機能のオンボーディング動画 初期設定が完了した段階で、「次のステップ」として応用機能の使い方を説明する動画。


戦略3|段階的なサポート動画(楽楽精算の事例から)

楽楽精算の事例でもう一つ重要なポイントは、「導入直後だけでなく、その後も継続的にオンボーディング動画が配信される」という点です。

これは、ユーザーが「新しい機能を導入する際に、また同じように自分で学習できる」という環境を作り出しています。結果として、顧客の「システムへの理解度」が深まり、利用定着につながるのです。

楽楽精算の場合、サクセスナビには以下のようなカテゴリの動画が用意されています。

  • 初期設定関連(基本の使い方)
  • 電子帳簿保存法対応
  • ワークフローオプション
  • ICカードオプション
  • AI Travel連携オプション

このように、導入後の各段階で「その時々の課題に対応した動画」が用意されていることで、ユーザーが常に「自分で解決できる環境」が保たれるのです。


「オンボーディング動画」制作の実務ガイド

「オンボーディング動画」の制作費用(事例企業の規模別)

オンボーディング動画の制作を検討されている企業担当者から、最初に質問されるのが「制作費用はいくらかかるのか」という点です。実務的な相場をお伝えします。

オンボーディング動画の制作費用は、以下の要素によって大きく変わります。

①動画の本数 初期設定ガイドだけなら3~5本、複数機能を含める場合は10本以上になることもあります。

②動画の長さ 楽楽精算の事例では、初期設定動画は8~13分程度。短いガイド動画(1~3分)と詳細解説動画(10~20分)を組み合わせることが一般的です。

③アニメーション・実写の有無 画面操作のみのスクリーン動画であれば制作コストは比較的低く、アニメーションや実写を組み合わせると費用が上がります。

④修正対応の範囲 サービス更新時に動画の修正が必要になることを想定し、修正対応の契約内容も重要です。

一般的な予算感:

  • 小規模案(初期設定ガイド動画3~5本、スクリーンのみ):30万~50万円
  • 中規模案(基本機能ガイド8~10本、簡易アニメーション含む):50万~100万円
  • 大規模案(複数機能・オプション含む15本以上、高度なアニメーション):100万円以上

「オンボーディング動画」の制作期間の目安

制作期間は、企画から納品までのフロー次第で大きく変わります。一般的な流れは以下の通りです。

①企画・構成案作成:1~2週間 どの機能をオンボーディング動画化するか、どの順序で見せるか、という構成を決める段階です。この段階で、貴社のカスタマーサクセス部門との打ち合わせが重要になります。

②台本(シナリオ)作成:1~2週間 各動画の台本を作成し、画面遷移や説明の流れを定義します。

③動画制作(撮影・編集):2~4週間 画面操作の撮影やアニメーション制作、ナレーション録音などを行います。本数が多いほど時間がかかります。

④修正・調整:1~2週間 納品後の修正対応。サービス仕様の変更や、説明の修正などを反映します。

総制作期間の目安:6~10週間(1.5~2.5ヶ月)

ただし、企画段階での確認不足や仕様変更があると、制作期間は大幅に延長される可能性があります。事前に「制作スケジュール」と「確認フロー」を明確にしておくことが重要です。


「オンボーディング動画」制作時の注意点

オンボーディング動画を制作する際に、多くの企業が陥りやすい落とし穴があります。事前に知っておくことで、制作がスムーズに進みます。

注意点①:「全機能を詳しく説明する」という誤解

オンボーディング動画の目的は、「全ての情報を正確に伝える」ことではなく、「ユーザーが実際に使い始められるレベルまで」導くことです。初期設定動画に「全ての設定項目の詳細」を含めると、かえってユーザーの学習負荷が増してしまいます。

注意点②:「一度制作したら終わり」という誤り

サービスがアップデートされるたびに、オンボーディング動画も更新する必要があります。最初の制作時に「修正・更新対応の契約内容」を明確にしておくことが重要です。

注意点③:「ユーザーの実装状況を確認しない」という落とし穴

オンボーディング動画を配信した後、実際にユーザーがどの程度活用しているか、どの段階で躓いているか、という情報を収集することが重要です。このフィードバックがなければ、動画の改善ができません。

注意点④:「カスタマーサクセス部門との連携不足」

動画を制作する側(制作会社)と、顧客に対応するカスタマーサクセス部門の情報共有が不十分だと、顧客からの質問に対応できなくなります。動画制作時から、CS部門を巻き込んだ打ち合わせを心がけることが重要です。


「オンボーディング動画」導入企業のよくある質問(FAQ)

Q1:「オンボーディング動画」は何分くらいが最適か

A:初期設定動画は8~13分、短尺ガイドは1~3分が一般的です。

楽楽精算の事例では、初期設定関連の動画が8分44秒~13分34秒程度に設定されています。これは「集中力が続く長さ」と「内容を十分に説明できる長さ」のバランスが取れた長さです。

一方、「この機能だけ」という短尺ガイドであれば、1~3分程度で十分です。重要なのは「その動画で何を伝えるか」を明確にすることで、長さは自動的に決まります。


Q2:複数部門向けに「オンボーディング動画」を分ける必要があるか

A:部門によって「困りポイント」が異なるため、分けることを推奨します。

たとえば経費精算システムの場合、「管理者」「申請者(従業員)」「経理部門(承認者)」で必要な情報は異なります。

  • 管理者向け:初期設定、ユーザー登録方法
  • 申請者向け:操作方法、提出期限
  • 経理部門向け:承認フロー、仕訳処理

このように、各部門が「本当に必要な情報」に絞ったオンボーディング動画を用意することで、それぞれの利用定着率が高まります。


Q3:「オンボーディング動画」導入後の改善・修正への対応

A:事前に修正対応の範囲と費用を契約で定めておくことが重要です。

サービスのアップデートや仕様変更があると、オンボーディング動画も更新する必要があります。制作会社によって対応ポリシーが異なるため、事前に以下の点を確認しましょう。

  • 修正対応は何回までが含まれるか
  • 追加修正の場合の費用は
  • 対応期間は制作完了後、どの期間までか
  • 大型アップデート時の対応はどうするか

これらを契約時に明確にしておくことで、導入後のトラブルを防ぐことができます。


まとめ:「オンボーディング動画」で顧客定着を実現する

楽楽精算の事例から見えてきたのは、「オンボーディング動画」が単なる「マニュアル動画」ではなく、顧客定着戦略の中核をなすものだということです。

継続率99%、解約率0.25%という驚異的な成果は、以下の3つの戦略によって実現されています。

①スコープ設計:「何を削ぎ落とすか」を徹底的に考え抜く 初期設定の3ステップだけに絞ることで、ユーザーの実装負荷を最小化。

②配信タイミング設計:ユーザーが「困ったときに見つかる」構造を作る 独立したサポートサイトで、ユーザーが自分で検索するという行動パターンを定着させる。

③段階的なサポート動画:導入後も継続的に新しい課題に対応する 初期設定後も、その時々の機能追加やオプション導入に合わせてオンボーディング動画を配信。

もしあなたの企業が「新規顧客の導入直後の離脱」や「システムの利用率低迷」という課題を抱えているなら、オンボーディング動画の導入を検討する価値は十分にあります。

実装まで含めた相談や、貴社のサービスに合わせたオンボーディング動画の企画・制作に関しては、お気軽にお問い合わせください。導入後のユーザー体験を変えることは、そのまま顧客の成功につながります。

お困りのことがあれば、いつでもお声がけください。

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