AI動画は気持ち悪い?マクドナルドの反響から考える使い分けの基準

生成AIで動画が手軽に作れるようになり、「AI動画」を広告に使う企業も増えてきました。その一方で、SNSで「気持ち悪い」といった声を目にして、使ってよいのか迷う方もいるのではないでしょうか。

この記事では、日本マクドナルドが2024年に公開したAI動画が受けた反響を手がかりに、AI動画を広告や制作に使うときの考え方を整理します。結論から言うと、AI動画への反応は「AIを使ったかどうか」だけで決まるわけではなく、表現の質、目的との一貫性、視聴者の感情などが重なって生まれると考えられます。読み終えたときに、自社の動画を検討するための判断材料が手元に残るような内容を目指しました。


AI動画の反響はなぜ分かれたのか

マクドナルドのAI動画の概要

日本マクドナルドは2024年8月17日、公式Xアカウントで生成AI技術を使って制作した約16秒の動画を公開しました。内容は「マックフライドポテト」のセールを告知するもので、「カルメン前奏曲」に歌詞を付けた楽曲をバックに、ポテトを持った女性のイラストが次々と表示される構成です。キャッチコピーには「AIラブポテト」が使われていました。

この動画の制作者は「Kaku Drop 架空飴」として紹介されています。生成AIの映像作家として活動する人物で、性別以外の情報は非公表とされています。

肯定的な声と否定的な声の両方が上がった

公開後、X上では反応が分かれました。「とってもかわいい」「これぞ新時代の広告」といった肯定的な意見がある一方で、「AIである必要性が感じられない」など、生成AIの広告起用に否定的な声が多く上がったと報じられています。

反響の規模についても、掲載時点でXの投稿のインプレッション数は894万、リポスト数は約4300、いいね数は約5700だったと伝えられています。

同じ動画でも、受け取る人によって評価が大きく変わったことがわかります。広告は多くの人の目に触れるため、一部の反応だけで判断せず、どんな層がどう感じたのかを考える視点が大切です。


「気持ち悪い」と感じられた理由

「AIを使う」が目的になると違和感が残る

否定的な声の中には、「『AIを使う』が目的になっててそもそもCMとしてあんまり良くない」という指摘もありました。

視聴者は「どんな技術で作られたか」より「何を伝えたい動画なのか」を見ています。AIを使ったこと自体が前面に出ると、商品の魅力やメッセージが届きにくくなる。その違和感が、否定的な感想の一因になったと考えられます。

指の描写や不自然さが違和感を強めた

一方、表現の面でも違和感が指摘されています。動画の中には、女の子の指が6本に見える場面があり、SNSで拡散されたと伝えられています。また、なんとなく違和感を覚える画像があり、身近なマクドナルドのポテトを汚されたように感じた人も少なくなかったようです。

AI生成の映像では、細かな部分の不自然さが目立ちやすくなります。こうした違和感が「気持ち悪い」という感情につながったと考えられます。

「クリエイターの仕事を奪った」という受け止め

マクドナルドは2023年9月に公式Xで投稿した広告アニメーションで、商業デビューとなる新人イラストレーターを起用し、「マクドナルドはクリエイターの味方」と評価されていました。その経緯があったうえでの生成AI起用だったため、「クリエイターの仕事を奪った」と感じた視聴者が多かったとも言われています。

広告表現は、企業と視聴者だけでなく、制作に関わる人々との関係も映し出します。過去の取り組みとの連続性が、受け取られ方に影響することがあると考えられます。

不気味の谷という心理

AI生成のキャラクターが人間に近づくほど、わずかな違和感が強い嫌悪感に変わる現象は「不気味の谷」と呼ばれています。マクドナルドのAI動画についても、この現象が炎上の背景にあると分析する記事があります。Source

「気持ち悪い」という感情は、一つの原因だけでなく、こうした複数の要素が重なって生まれると考えると整理しやすくなります。


AI動画を広告に使うときの判断軸

誰に何を感じてほしいかを先に決める

AI動画を作る前に、「誰に、何を感じてほしいか」を一文で書き出してみてください。例えば「新商品を知ったばかりの若い層に、楽しそうだと感じてほしい」といった形です。この一文があると、AIを使うかどうかの判断も自然にできます。

AI・実写・アニメーションのどれが目的に合うか

手段の選び方は、目的ごとに考えるのが現実的です。AIは試作や雰囲気の確認を素早く行う場面で役立つ一方、人物の自然さや細かな動きの一貫性が求められる場合は、実写や手描きのアニメーションの方が適していることもあります。どれが優れているかではなく、伝えたい内容に合っているかを基準にしてください。

視聴者の受け取り方を公開前に想定する

公開前に、「この表現を見た人はどう感じるか」を想像する時間を取ることが大切です。肯定的に受け取る人がいる一方で、違和感を覚える人もいることを前提に、社内の複数人で見てみると気づきが得られやすくなります。特に指や顔などの細部、過去の取り組みとの整合性は、確認しておきたいポイントです。


AI動画の制作で確認しておきたいこと

制作の目的と完成イメージを明確にする

AI動画は手軽に試せる分、「とりあえず作ってみる」になりやすい側面があります。制作を依頼する場合も、完成したときに視聴者にどんな行動をしてほしいかを先に決めておくと、修正の方向がぶれにくくなります。

素材や権利の扱いを確認する

生成AIを使った素材は、利用規約や関連する法律によって扱いが異なる場合があります。また、制度や規約は変わることもあるため、利用するツールや提供元の最新の情報を、その都度確認することをおすすめします。権利に関する判断は、必要に応じて専門家に相談してください。


AI動画のメリットとデメリット

メリット

  • 試作や制作のスピードを上げやすく、いくつかの案を比べやすい
  • 実写では難しい表現や、イメージを形にする幅が広がる

デメリット

  • 視聴者の反応が割れる可能性があり、表現を誤ると違和感として残りやすい
  • 細部の不自然さや、制作者への配慮など、社会的な受け止めを考える必要がある
  • ブランドイメージへの影響を考えた確認が欠かせない
  • 素材や権利の扱いについて、事前の確認が必要になる

メリットを活かすためには、「AIだから使う」ではなく、「この目的に対して有効だから使う」という理由を持つことが大切です。


よくある質問

Q. AI動画は広告として使っても問題ないのでしょうか?

A. 一概に問題がないとも、問題があるとも言い切れません。使用するツールの規約や素材の権利、広告の掲載先のルールなどを確認したうえで判断することが大切です。詳しい扱いは、最新の規約や専門家の情報をご確認ください。

Q. 「気持ち悪い」と言われないAI動画にするコツはありますか?

A. 特定の正解はありませんが、視聴者が何を知りたいかに焦点を当て、技術を前面に出しすぎないことが一つの考え方になります。細部の不自然さがないかを確認し、公開前に複数の人で見て違和感がないかを確かめるのも有効です。


まとめ:手段より目的を先に決める

マクドナルドのAI動画の反響は、AIを使ったかどうかだけでなく、目的との一貫性、表現の細部、制作者との関係性など、複数の要素が受け取られ方に影響することを示しています。AI動画を使うかどうか迷ったときは、「誰に何を感じてほしいのか」を先に決め、その目的に手段が合っているかを確認してみてください。

今日からできる一歩は、次に作る動画の目的を一文で書き出し、社内の人に「これは何を伝える動画か」を聞いてみることです。答えがぶれるようなら、まだ目的が固まっていないサインかもしれません。

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